日本ペンクラブ声明 東日本大震災8年目を迎えて~「災害」を口実に憲法を変えてよいのか
- 2019.03.08
- 声明
8回目の3.11 東日本大震災の日がめぐってきます。地震、津波、原発事故……言い尽くせない悲嘆と苦しみと怒りを抱えた人たちが三陸沿岸に、また原発事故により避難した人々は全国各地に暮らしています。復興はまだ途上であり、原発事故周辺では地域再建の見込みすら立っていません。
しかし、その一方で、憲法を改正し、「緊急事態条項」を加えようという動きが進んでいます。これは、大規模な災害の際、首相や内閣に絶大な権限を与え、迅速な対応を可能にするとされていますが、ここで言われる「災害」は自然災害に限られず、大規模事故、テロや武力衝突や戦争、デモや反対運動による政府機能の停滞など、広範囲に想定されるものとなっています。
このような条項が発動された場合、民主主義の根幹である三権分立の原則が破壊されるだけでなく、取材・報道の自由、表現と情報流通の自由が失われ、起きていることの真相、家族や友人知人の安否、一人ひとりができること、やるべきこと等、誰もが必要とする情報も届かなくなってしまいます。
すでに東日本大震災の原発事故において、政府・電力会社が事故の詳細と広がりの情報を迅速に公開しなかったために被害を拡大させてしまった事実が明らかになっています。さかのぼれば、厳しい言論統制が敷かれた戦時中の甚大な被害は、政府が情報を独占し、歪曲・操作したことから引き起こされたものでした。
私たち日本ペンクラブは各メディアのジャーナリストや制作者、作家や各分野の表現者、そして多くの市民に訴えます。8年前のあの大災害を口実に、憲法に「緊急事態条項」を加え、政府に絶対的な権限を持たせようとする動きを注視し、それに対する疑念を出し合うときです。私たちはこの社会の何が変わり、何が変えられようとしているかをともに考え、行動していきたいと思います。
2019年3月8日
一般社団法人日本ペンクラブ
会長 吉岡 忍
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