日本ペンクラブは、国際ペンの日本センターです。
日本ペンクラブは、1935年11月26日に創立されました。初代会長をつとめたのは島崎藤村です。当時の日本は、満州事変後に国際連盟も脱退して国際的に孤立に向かう状況に置かれていました。それを憂える動きが、リベラルな文学者、在外の反ナチス、反ファッショの外交官の間にありました。そして、1935年3月ごろ、ロンドンの国際ペンから日本にペンクラブの設立を求める要請があり、駐英大使館の宮崎勝太郎一等書記官が外務省ルートで日本に伝えてきたのが、創立に結びつきました。
要請を受けた外務省文化事業部の詩人でもあった柳沢健課長が、第一線の作家・詩人・外国文学者・評論家の有志とはかり、島崎藤村、徳田秋声、正宗白烏らの賛同を得て、創立にこぎつけました。もともと国際ペンは、第1次世界大戦後間もなく、イギリスの女流作家C.A.ドーソン=スコットの提唱により、戦争の悲惨を繰り返すまいと願い、作家・文筆家の表現の自由を確立して、国境を超えた相互理解と連帯をはかろうという趣旨のもとに、1921年10月にロンドンで誕生したのがはじまりです。国際ペンの初代会長にJ.ゴールズワージが就任し、フランス、アメリカなど11ケ国にペンセンターが次々に設立され、国際ペンの各センターとして活動を始めました。1923年には第1回の国際ペン大会がロンドンで開かれました。
日本ペンクラブも、創立と同時にロンドンの国際ペンの日本センターとしての役割を担いました。当時の国情を考慮して、「ペンクラブの本部はロンドンにあるが、日本ペンクラブは独立してできたもので、外国のペンクラブと友誼関係にある」と入会案内に付記されたりしましたが、原則はあくまでも国際ペン本部の日本のセンターでした。
1935年の創立総会には、国際ペンの第2代会長H.G.ウェルズから祝辞が寄せられ、島崎日本ペンクラブ初代会長は、国際ペンの仲間入りをすることによって、日本の文学が海外へ浸透する機運の到来を期待する、と挨拶しました。翌36年9月アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開かれた第14回国際ペン大会には、島崎会長と有島生馬副会長が正式代表として参加しました。
その後、日中戦争、太平洋戦争下に国際交流も途絶え、言論弾圧のひとしお厳しくなった時代にも、日本ペンクラブは中島健蔵常務理事や事務局の人々の努力で存続し、ロンドンのセンターと連絡をとって、唯一、世界への窓口であることを守り抜いたのでした。
P.E.N.
「国家間に溝が深まる時でも、国際ペンは友好への掛け橋を閉ざすことのない類まれなる組織である。」
― マリオ・ヴァルガス・リョサ ―
国際ペンは1921年に文学振興のために設立され、現在では世界102ヶ国に144センターを有する団体 です。文学というものが他の文化圏を理解し関わっていくのに不可欠であるという認識の上に立っています。
国際ペンの主な目標は、読書や執筆活動を通じて、様々な言語や文化の枠を超え、社会やコミュニティ に対し働きかけ、サポートし続けることです。私たちは市民社会を変革する重要な役割を作家が担えると確信しています。翻訳、表現の自由、国際間、地域間、国家間の別なく文学に触れる機会を拡充させるというような、さまざまな問題に対して国際キャンペンを展開したり、文学を振興する活動を国際ペンは行っています。
国際ペンの会員資格は国籍、言語、人種、肌の色、あるいは宗教に関わりなくPEN憲章に同意する全ての職業作家に対し開かれています。国際PENは非政治的組織であり、ユネスコや国連において特別な助言を行う立場にあります。
国際ペンは英国において非営利団体1117088として登録されています。
国際ペンの活動と歴史
1921年、国際ペンはロンドンでドーソン・スコット(Mrs. C.A. Dawson Scott)氏により創設されました。初代会長はジョン・ガールスワーシー(John Glasworthy)。文学の振興、表現の自由の擁護、そして世界中の作家達の共同体を発展させる目的の下、作家の国際的で唯一な協会として設立されたのです。
文学の分野において、国際文化協力や相互理解をするには、表現の自由は絶対不可欠です。それ故に、国際ペンは、自分達の意見や思想を表現したことによって脅迫され、投獄され、時として殺害されてしまう作家達を擁護し、政治的検閲に対し、強く反対しています。
発足当初、国際ペンのセンター(支部)はヨーロッパ中心に展開していましたが、他の地域の作家達も熱心にその活動に参加し、1926年には15カ国より会員がベルリンに集いました。今日の国際ペンは102ヶ国144個所の支部で構成されています。国際ペンの会員資格は国籍、言語、人種、肌の色、あるいは宗教を問わず、全ての職業作家に対し開かれています。各センターは自国内において会議やセミナーを開催し、独立した文化的、知的団体として活動します。そして、全てのセンターは本部を通じ、互いに連携を保っています。
初期のペン会員にはジョセフ・コンラッド(Joseph Conrad),ジョージ・バーナード・ショウ(George Bernard Shaw)、H・G・ウェルズ(H.G. Wells)がいました。ヨーロッパにおいて、各センターが創設されたと共に、アナトール・フランス(Anatole France)、ポール・バレリ(Paul Valery)、トーマス・マン(Thomas Mann)、ベネデット・クローチェ(Benedetto Croce)、そしてカレル・チャペク(Karel Capek)が会員となり、国際ペンの活動に積極的に参加しました。その後、国際ペンの会長となったアルベルト・モラビア(Alberto Moravia)、ハインリッヒ・ブル(Heinrich Boll)、アーサー・ミラー(Arthur Miller)、ピエル・エマヌエル(Pierre Emmanuel)、マリオ・バルガス・リョサ(Mario Vargas Llosa)、ゲルギイ・コンラッド(Gyorgy Konrad)等々、世界中のノーベル文学賞作家や著名作家が加わりました。
国際ペンの最高議決機関は、毎年開かれます国際ペン大会における各センターの代表で構成される代表者会議です。また、この代表者会議に加え、国際ペンの理念に基づき、各メンバーがその知性と想像力を結集させる文学行事や文学フォーラムも開催されます。そして、国際ペンの国際性と多様性は、その執行機関を構成する会長、監事、そして7名の理事の人選にも反映され、全世界の会員の中からが選ばれています。
歴代国際ペン会長
創設者: Mrs C. A. Dawson Scott
代 | 氏名 | 在任期間 | 会員区分 | 国籍 | 備考 |
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初 代 | ジョン・ゴールズワージ John Galsworthy | 1921-33 | Novelist | English | Nobel Prize in Literature (1932). Author of the Forsyte Saga. |
第2代 | H.G.ウエルズ H. G. Wells | 1933-36 | Novelist | English | As president he oversaw the expulsion of the German Centre during the 1933 Dobrovnik Congress. |
第3代 | ジュール・ロマン Jules Romains | 1936-41 | Poet | French | l’Académie Française (1946), founder of the Unanimism literary movement. |
第二次世界大戦中・直後は会長職委員会が運営 [Wartime International Presidential Committee 1941-47] | |||||
会長職委員会メンバー | |||||
フー・シン Hu Shih | 1941-47 | Philosopher and Essayist | Chinese | Leader of the Vernacular Chinese movement aimed at reforming written Chinese to make it open to all readers. | |
デニス・ソラー Denis Saurat | 1941-47 | Essayis | French | Advocate of French – English cultural links. | |
H.G.ウエルズ H. G. Wells | 1941-46 | ||||
ハーモン・キッド Hermon Ould | 1941-47 | Playwright and Poet | Also longtime International Secretary of PEN. | ||
トルントン・ワイルダー Thornton Wilder | 1941-47 | Playwright and Novelist | American | Pulitzer Prizes (1927, 1938, 1943 | |
E.M.フォスター E. M. Forster | 1946-47 | Novelis | English | ||
フランシス・モーリアック François Mauriac | 1946-47 | Novelist and Essayist | French | Nobel Prize in Literature (1952), l’Académie Française (1933) | |
イグナチオ・シローネ Ignazio Silone | 1946-47 | Essayist | Italian | ||
第4代 | モーリス・メーテルリンク Maurice Maeterlinck | 1947-49 | Symbolist, Playwright, Poet and Novelist | Belgian | Nobel Prize in Literature (1911). Author of “The Blue Bird” (1908) and Pelléas et Mélisande. |
第5代 | ベネデット・クローチェ Benedetto Croce | 1949-52 | Philosopher | Italian | “The Philosophy of Spirit”, Italian. Civilization is the “continual vigilance” against barbarism. |
第6代 | チャールズ・モルガン Charles Morgan | 1953-56 | Playwright and Novelist | English (Welsh) |
Best known for “The Fountain” (1932). |
第7代 | アンドレ・シャンソン André Chamson | 1956-59 | Novelist and Essayist | French | l’Académie Française (1956). |
第8代 | アルベルト・モラヴィア Alberto Moravia | 1959-62 | Novelist | Italian | Known for such novels as: “Gli Indifferenti” and “Il Conformista”. |
第9代 | ビクター・ファン・フリースランド Victor van Vriesland | 1962-65 | Writer | Dutch | |
第10代 | アーサー・ミラー Arthur Miller | 1965-69 | Playwright and Essayist. | Pulitzer Prize (1949). Principe de Asturias Prize for Literature. Known for such plays as: “Death of a Salesman” and “The Crucible”. | |
第11代 | ピエール・エマニュエル Pierre Emmanuel | 1969-71 | Poet | French | l’Académie Française (1968). Active in the Resistance during WWII. |
第12代 | ハインリビ・ベル Heinrich Böll | 1971-74 | Novelist | German | Nobel prize for Literature (1972), Georg Büchner Prize (1967). As PEN President he welcomed Alexandr Solzhenitsyn into exile and gave him first refuge in his Eifel cottage. |
第13代 | ビクター・プリチェット V. S. Pritchett | 1974-76 | Short story writer and Essayist | English | The Heinemann Award (1969), PEN Award (1974). |
第14代 | マリオ・バルガス・リョサ Mario Vargas Llosa | 1976-79 | Novelist | Peruvian | Nobel Prize for Literature (2010). |
第15代 | ペール・ウェストベリ Per Wästberg | 1979-86 | Novelist, Poet and Essayist | Swedish | Member of the Swedish Academy (1997). |
第16代 | フランシス・キング Francis King | 1986-89 | Novelist | English | The Somerset Maugham Award (1951), The Katherine Mansfield Short Story Prize. |
第17代 | ルネ・タベルニエ René Tavernier | May – Nov 1989 | Editor of la Revue « Confluences » |
French | |
(臨時代理) | ペール・ワーストベルグ Per Wästberg | (Interim) Nov 89 – May 90 | |||
第18代 | ゲオルギュー・コンラッド György Konrád | 1990-93 | Novelist and Essayist | Hungarian | leading dissident during the Soviet era. |
第19代 | ロナルド・ハーウッド Ronald Harwood | 1993-97 | Playwright | South African /English |
Academy Award for Best Adapted Screenplay (2003), The Humanitas Prize (2008). Author of “The Dresser” and “The Pianist”. |
第20代 | オメロ・アリジス Homero Aridjis | 1997-2003 | Poet and Novelist | Mexican | Environmental activist, founder of El Grupo de los Cien. |
第21代 | イジ・グルーサ Jiri Grusa | 2003-2009 | Poet and Novelist | Czech | leading dissident during the Soviet era. |
第22代 | ジョン・ラルストン・サウル John Ralston Saul | 2009-2015 | Novelist and Essayis | Canadian | |
第23代会長(現職) | ジェニファー・クレメント Jennifer Clement | 2015-present | Author | Mexican-American |