日本ペンクラブ声明「国会の空洞化に抗議します」(2024.5.9)に関する意見書等

日本ペンクラブ声明「国会の空洞化に抗議します」(2024.5.9)に関する意見書等

  1. 言論表現委員会
  2. 獄中作家・人権委員会
  3. 女性作家委員会
  4. 環境委員会

意見書  経済安保秘密保護法の廃案を求める


 秘密の多い社会は、自由な社会とは真逆の方向へと向かう。その先にあるのは戦争かもしれない。多くの国民から反対、疑問の声が上がっているなかで、今国会での成立が見込まれている「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」(私たちは法案の内容から、以下「経済安保秘密保護法案」と呼ぶ)は、言論表現の自由を希求し、それを侵害する動きを注視してきた日本ペンクラブ言論表現委員会としては、到底看過することができない危険な法案である。その内容から社会に与える影響があまりにも大きく、ただちに同法案の廃案を求める。
 同法の本質は、2013年に成立した特定秘密保護法の拡大版であることだ。特定秘密保護法は、外交・防衛・テロ・スパイ活動という4分野の特定秘密に関する法律だ。それ自体非常に問題の多い法律だが、その対象は主に公務員だった。ところが今回の「経済安保秘密保護法案」は、市民ひとりひとりの日常生活の幅広い分野で、国家が秘密指定した情報の一元管理を行おうというのである。広範な経済活動のなかの産業技術開発、学術研究といった場面で、国家が行う私権制限を正当化する。法の対象も公務員だけでなく、企業の科学者・技術者・研究補助者などもその対象となる。さらには、技術情報を伝える学校の教員や、ジャーナリストらも対象となる。とりわけジャーナリズムに与える萎縮効果が懸念され、敢えて言えば、現下のロシアの国営メディアのような状況に陥ることを怖れる。
すでに日本弁護士連合会や、多くの学術研究団体等から、同法案の成立に反対する声があがっている。そこで指摘されている同法案の問題点をここで縷々繰り返すことはしないが、ほんの一端だけに触れておけば、秘密の範囲が曖昧で拡大解釈されるおそれが大きいこと、秘密を扱う(職務上触れる)人物が膨大な数の民間人一般に及んでいること、その際「適性検査」(セキュリティ・クリアランス)制度なるものが導入されて、個人のプライバシーが侵害されるおそれが極めて大きいこと、特定秘密保護法と同等の重い刑事罰の適用が定められていることなどが指摘されている。
 公共情報の公開と透明性の確保こそは民主主義維持の根幹である。市民の情報への権利に関する国際規範として最も信頼されている「ツワネ原則」はいう。「市民が政府を監視し、民主主義社会に参加するために、安全保障も含む情報へのアクセスが不可欠である」。今回の「経済安保秘密保護法案」は、あらゆる点で「ツワネ原則」に逆行している。
 日本で暮らす私たちは、近年、政府が国民に嘘をつき情報を隠し続けてきたことや、公文書が政府によって改竄、破棄されたことを知っている。さらには経済安保の名のもとに、公安警察が企業の無辜の技術者らを、敵対国家への違法な技術輸出だとして逮捕拘留し、でっち上げた所業をみてきたばかりだ(いわゆる大川原化工機冤罪事件)。
 日本ペンクラブ言論表現委員会は、「経済安保秘密保護法案」が今国会で成立が見込まれるこの機に、日本弁護士連合会の姿勢を支持し、同法案の廃案を強く求めるものである。

                  2024年5月9日
                  日本ペンクラブ言論表現委員会


5月9日 日本ペンクラブ会見 「入管法」に関しての説明要旨


《6月10日に全面施行になる改定入管法の問題点》
1.  第一に、これが「立法事実が崩壊した」という批判の中で「強行採決」されたことが問題。「国会の空洞化」を象徴する、もはや慣例ともなっている「強行採決」だが、議席数ですべてが決まってしまうなら、国会という議論の場はあまりに空虚である。以下に、具体的な問題点を挙げる。
2.  生命の危機にある難民を日本の国の都合で本国に送り返す危険がある(難民認定申請3回目以降は送還可能とし、難民保護規定の例外を法制化した)。過去には、国連が難民と認定したマンデート難民を日本政府が強制送還した例も、複数回申請者が裁判で難民不認定を撤回させた事例もある。拙速な運用を厳に慎むとともに、真の「改正」に向けて議論を開始すべきである。
3.  収容施設外で生活する非正規滞在者を家族や支援者に監視させ、その生活実態を入管に報告させる「監理措置」を法制化した。信頼関係を損なう危険があるため多くの支援者・家族は「監理人」になることを不安視している。守秘義務を持つ弁護士は「監理人」になれない。この新しく法制化された「監理措置」は、「監理人」になるかわりに違法な仕事を闇で斡旋し搾取するような「貧困ビジネス」の温床になる危険が指摘されている。
4.  そもそも「入管法」を変える必要性が生じたのは、入管被収容者数が異常に膨らみ、自殺や餓死などの事態を生んでいることに対策が求められたからである。2021年3月には名古屋入管でスリランカ女性ウィシュマさんが亡くなったが、入管はその責任を認めていない。過去の死亡事件で入管が責任を認めたことはない。入管収容に上限を設ける、司法を介在させるといった、根本的で実際的な法改正議論はなされていない。
5.  昨年八月に法務大臣が、日本で生まれ育った未成年仮放免者とその家族に在留特別許可を出す方針を示した。しかし改定入管法施行までの時限的措置とされ、親の事情などによって救済の枠外に置かれる子どもがいるなど、さまざまな課題を積み残している。

こうしたいくつもの問題が、拙速に採決された法案によって生じていて、多くの当事者が6月の施行前に悲鳴を上げている。

《今国会で審議されている入管法の問題点について》
6.  「永住権取消」を容易にする法案は、日本に88万人いる永住者たちの日本社会での地位を不当に不安定にする法案である。在留カード不携帯や税金の滞納が取消の根拠となるが、有識者会議の最終案にすら入っていなかったものが、いきなり政府案にねじ込まれた。どこでも一切、議論していないものを、強行採決で決めるのであれば、いったいなんのために国会は存在するのか。「育成就労は移民労働者の永住権に道を開くので、永住許可を簡単に取り消せる制度を作ろう」という矛盾に満ちた発想をもとにしたこの法案の背景に、一部の保守層に根強くある外国人排斥、外国人嫌悪があることを深く憂慮する。

           2024年5月9日
                  日本ペンクラブ獄中作家・人権委員会


離婚後共同親権の導入について
是非の判断も含め、慎重かつ十分に国会審議を尽くすことを求める意見書


 女性作家委員会では、ジェンダーの視点からイベントを重ね、今国会で審議されている「共同親権」についても太田啓子弁護士を勉強会の講師としてお招きし、学んできました。
「共同」という言葉が、良き面を印象づけ誤解されていますが、そうではなく、DV被害者の命すら危ぶむ法案だと考えています。それは、声明の通り、国会議論が拙速なためです。
 この民法改正の審議は、通常、家族法制の法制審議会では全会一致で採決されるところ、委員21人中3人が反対する異例のスタートでした。これまでに多くの当事者・支援者・弁護士・学校関係者・医師らが、反対しています。また、署名も23万筆集まっています。特に、423人の弁護士が「国民の行為規範としては極めて不適切であり、誤導により現場を混乱させることは明白」と反対を表明したことや、日弁連をはじめ全国各地の弁護士会も反対の意見書を続々と発表していることについては、つまり離婚の実態をよく知る人々が反対しているということだと理解します。
 仮に法案が可決し、施行された後の可能性として、離婚後のアビューズ(ポストセパレーションアビューズ post-separation abuse:元配偶者や親という立場からの付きまといや嫌がらせ)の増加が懸念されています。つまり「望まない親子関係を子に強いる」「子の意思が尊重されない」ということが起こり得ます。それ以外にも、「単独親権を行使できる要件の『急迫の事情』『日常行為』が不明確」「DV被害者の子連れ避難が難しくなる」「経済的・精神的DVなど第三者から見えにくいDVを証明できずに共同親権になる」「高校無償化、児童扶養手当、奨学金など、父母双方の収入合算により受けとれなくなる」などの問題があり、具体的な窮地に追い込まれる親子が出ることも予想されています。
 また、離婚後の親権について父母の協議で合意できない場合は家庭裁判所が「子の利益」の観点で決めることになっていますが、すでに人的・物的に不足している家裁での紛争が多発し、パンクする懸念も示されています。
衆議院法務委員会の参考人として意見を述べた岡村晴美弁護士も「権力の強い側しか利さない」「相談して決めることができる人には必要がなく、対立関係にある人ほど強く欲する制度」と指摘しています。本来、親にあるのは「権利」ではなく「義務」や「責任」であり、ましてや、元配偶者や子どもは所有物ではありません。
 離婚しても話し合いが成立する父母はすでにそうしているし、できない場合、その原因を第三者が正確に判断するのが難しいことは、素人でもわかります。そこに国の法律が介入すること自体が、前時代的であり、憲法24条との抵触も懸念されています。
 DV被害者保護制度、あるいは養育費不払いへの罰則規定などが不十分な中、話し合われるべき順序は逆であり、DV被害者を追い詰める「共同親権」を拙速に成立させてはならないと私たちは考えます。廃案を含め、慎重かつ十分な国会審議を求めます。

2024年5月9日
日本ペンクラブ女性作家委員会

 

5月9日 日本ペンクラブ会見 環境委員会要旨


 今回の会見は、桐野会長や各委員長の話にあったように、現国会で話が具体的に進んでいるものを中心としています。
 環境委員会はこれらに直接の関わりはありませんが、「人新生」という地質学用語が使われているように、今や人間の経済、社会、政治的活動は、地球における人類の生存を危機にさらすところまで来ています。

 原発の廃炉のめどさえ立っていないのに、再稼働を急ぐ政府や、気候変動、食糧自給、地域経済の疲弊、森林や海の異変など、どれをとっても重要な政治課題を含んでいます。しかし、いずれも国民の合意を得るような議論が進んでいないのが現状です。

 この場を借りて、国会をはじめ、政治の活性化を訴えます。

2024年5月9日
日本ペンクラブ環境委員会