日本ペンクラブ声明 「香港に自由を~私たちの民主主義的価値も脅かされている」

日本ペンクラブ声明 「香港に自由を~私たちの民主主義的価値も脅かされている」

 香港の自由が脅かされている。言論の自由だけでなく、自由に、自律的に生きようとする人々の生存基盤が失われようとしている。
 私たちはこの間、香港国家安全維持法をめぐる当局と市民の動きを注視してきた。しかし、6月末の同法の施行以降、香港当局は立法会選挙に向けた民主派の選挙活動を締めつけ、民主派活動家や学生を相次いで逮捕し、一昨日はまた地元新聞社への家宅捜索と創業者逮捕、さらに日本を含め世界に向けて香港の民主主義の危機を訴えてきた周庭氏らの逮捕を強行した。その一部は保釈されたとはいえ、一連の強権発動は言論の自由を制約し、重苦しい沈黙と萎縮効果をもたらしている。
 国であれ、地域であれ、そこで暮らす人々の自由と人権と多様性が奪われたら、その社会の未来も失われる。中国が国際公約として掲げてきた一国二制度のもとで発展してきた香港は、いまや危機に瀕している。いや、同法が諸外国に住む香港人の活動はもとより、香港の自由と民主主義を支持する外国人の活動にも適用されるとあっては、世界中の言論・表現の自由をはじめとする民主主義的価値が脅かされていると言うべきである。
 私たちは香港当局に、香港の自由と民主化のための活動ゆえに逮捕されたすべての人々の即時釈放と、強権的な対応をただちにやめるよう強く求める。
 また、日本政府に対しては、香港当局に対する粘り強い説得とともに、香港を追われ、保護を求める人々を積極的に受け入れるよう要請する。

2020年8月12日
一般社団法人日本ペンクラブ
会長  吉岡 忍