【国際ペン声明】イスラエルの表現の自由に対する侵害を非難する(2023.10.20)

【国際ペン声明】イスラエルの表現の自由に対する侵害を非難する(2023.10.20)


 国際ペンは、10月7日以来、イスラエルとハマスの暴力が激化していることを受け、表現の自由に対する侵害の増加と、ジャーナリストの殺害や威嚇、批判に対する組織的抑圧を強く非難する。戦争や紛争に関するジャーナリストの自由かつ安全な報道は、絶対に守られなければならず、恐怖や威嚇を受けることなく、批判や異議を唱え、表現されなければならない。

2023年10月20日


◆ジャーナリストとメディアへの攻撃

 10月7日のハマスによるイスラエル攻撃の後、暴力は激化し、イスラエルのガザに対する広範な爆撃と完全包囲を批判する声も標的になっている。不均衡な報復は、国際人道法の明白な違反であり、ガザ市民とインフラに甚大な影響を与えている

 報道に携わった21人のジャーナリストが殺害され、ジャーナリストに対する様々な攻撃、威嚇、嫌がらせが続いていることに国際ペンは衝撃を受けた。殺害された人たちの中には17人のパレスチナ人、3人のイスラエル人、1人のレバノン人が含まれ、さらに、8人が負傷し、3人が行方不明または拘束されている。

 10月13日には、イスラエルの方角から発射されたミサイルにより、レバノン南部でロイター通信のジャーナリストが殺害され、アルジャジーラ、アジャンス・フランス・プレス、ロイターの6人のジャーナリストが負傷した。彼らは明らかにジャーナリストと判断できる服装をしていたにもかかわらず攻撃を受けた。

 10月15日には、イスラエルの武装警察がテレビに登場し、アシュドッドからのライブ報道中のアルアラビーTVの記者アフマド・ダラウシャを脅迫。BBCのジャーナリスト、ムハンナド・トゥトゥンジ、ハイサム・アブディアブ、および紛争を報道しているBBCアラビア語チームは、テルアビブで警察に呼び止められ、捜索を受けた後、襲撃され、銃を突きつけられている。これらはジャーナリストに対する威嚇の一例にすぎない。

 イスラエルによる爆撃はガザのインフラ、通信に壊滅的な打撃を与え続け、インターネットへのアクセスにも深刻な制限をもたらしている。パレスチナ人の大半は強制的に避難させられており、ソーシャルメディアやアプリで家族に安否を伝えるのも困難な状況にある。ガザのインターネットサービスは不十分で、主に2Gネットワークサービスしか提供されていないことが知られている。

 国際ペンは、これまでにもイスラエルとパレスチナ占領地におけるジャーナリストやメディアへの攻撃を非難し、2021年5月の敵対行動に関連する戦争犯罪の可能性を調査するよう国際刑事裁判所に要請してきた。

◆批判に対する組織的封殺

 イスラエルの大規模なガザ空爆に関するジャーナリズムの報道を、主要メディアが自らの報道の歪曲も含めて抑え込もうとしているという報道は、特に懸念すべきである。ガーディアン紙は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が自らを手術している漫画に「ガザの住民よ、今すぐ出て行け」というキャプションを付けて描いたを漫画家スティーブ・ベルを、解雇した。

 BBCは中東のレポーター6人を放送から外し、彼らのソーシャルメディアへの投稿が親パレスチナ的であったとされることについて調査を開始したと報じられている。この調査は、親イスラエル派のメディア監視団体から、記者がイスラエルに偏見を持っていると非難されたことを受けて行われたようだ。記者たちの名前と写真はマスコミに出回り、ソーシャルメディア上でハマス支持を非難され、彼らに恐ろしい衝撃を残した。今週初め、BBCはイギリス全土で行われた親パレスチナ派のデモについて、ハマス支持を非難する発言をしたことを謝罪し、英国でのデモ行進に関する発言が誤解を招くものであったことを認めた。

 イスラエルとパレスチナ占領地域に住むパレスチナ人は、ガザとの連帯表明や、イスラエルを批判することで、報復に合っている。10月16日、著名なパレスチナ人歌手であり神経科学者でもあるダラル・アブ・アムネが、ナザレの自宅からソーシャルメディア上の活動を理由にテロ扇動の疑いで逮捕された。釈放後に発表された声明の中で、彼女はイスラエル警察による不当な扱いを受けたと主張している。

 文学や文化的公演も中止または延期が多くなっている。パレスチナ・フリーダム・シアターの報告によると、フランスのチョワジ・ル・ロワ市長は、俳優アーメド・トバシが難民キャンプでの生活の中でアイデンティティに焦点を当てた公演 “And Here I Am” を中止させた。同様に、フランクフルト・ブックフェアの授賞式を運営する LitPromm は、パレスチナ人作家アダニア・シブリの授賞式を延期した。シブリは小説『Minor Detail』で LiBeraturpreis を受賞する予定だったが、「イスラエルに対するテロ」を理由に、ブックフェアは「イスラエル側に完全に連帯する」と述べた。

 国際ペンは、緊張が高まっている今、すべての公的機関やメディア機関が責任を持って行動する必要性を繰り返し述べ、文学は、このような時こそ、対話が妨げられることなく、すべての声への平等な場の提供を保証すべきだと強調した。議論を可能にするどころか、個人の行動を変異させ、歪曲させ、縮小させようとする協調的な試み、あるいはイスラエルのとった行動に対する批判を、ハマスの行動に対する事実上の支持として報道することは、社会的結束を損なうだけである。

◆集会の制限

 これらの事件により、複数の国で治安維持を口実に、表現や集会の自由に制限を課している。数百人のユダヤ人活動家が米国議会で座り込み、「イスラエルによるパレスチナ人への継続的な弾圧」に反対するデモを行った際に逮捕された。フランスのジェラルド・ダルマナン内相は、治安への懸念から、親パレスチナ派デモを禁止し、主催者を逮捕するよう警察に指示。ドイツでは、ベルリンで行われた “無許可” の親パレスチナ・デモで174人の参加者が逮捕されたと報じられている。英国では、スエラ・ブラバーマン内務大臣がイングランドとウェールズの警察に対し、パレスチナ国旗を振ることは不当である可能性を書簡で示唆した。

 私たちは、平和的な抗議行動に対する正当な権利に対する制限を撤廃するよう求める声に賛同する。



◆国際ペンウェブサイト該当ページ(2023.10.20)